神社の参拝作法は絶対に二礼二拍手一礼でないといけないのか
神社にお参りするときの作法「二礼二拍手一礼」。神社のお参りの作法に興味を持つ人も増えて、この作法でお参りしている人もけっこういると思いますが、必ずこの作法でお参りしなければならないのでしょうか。
いっとき話題になった拍手をしないという作法や二礼二拍手一礼の歴史についても少し触れながら考えてみたいと思います。
参拝はあくまで本人の信仰のもとに
先に結論的なことをいうと敬意を持ってお参りをすれば二礼二拍手一礼でなくても悪いことはありません。
それぞれの信仰や考え方がありますからそれらを否定するものでは有りません。自分自身の思いを込めて行うもので強制されてやるものでもありませんので自由な作法でお参りしても大丈夫です。
「決まった作法があってその通りじゃないといけない」と思っている人もけっこういるかもしれませんが、神道には教義は無ありませんので絶対にこれで無ければならないという物は無いのです。
二礼二拍手一礼だったり、故実に基づく独自のお参りの作法があったりしますがそれは絶対強制されるものでは無く、神主側も聞かれたら参拝作法を説明するけど違う方法でお参りしたいという人には強制しないというスタンスでは無いかと思われます。
某有名人が女性は拍手を打たないとか音をたてないとか言っていたけど・・・
一昔前にテレビ番組で某有名人が女性は拍手を打たないとか音を立てないとかいう解説をして話題になったり問題になったりしましたね。
個人で好きにお参りするのは良いとしても、影響力のある有名人がテレビなどのメディアで「こうやってお参りするものだ」などと確定事項のように説明すると影響は大きいですし、多くの神社では「二礼二拍手一礼」と説明しているのに違う作法を広められて遺憾に感じる神主もいるでしょう。
個人で好きにお参りするのは勝手だけれども、これが本当の参拝作法ですみたいな感じで広めないで欲しいというのが個人的な感想です。
拍手を打たないことについて
Chilly*hellyさんによる写真ACからの写真
なんで「女性は拍手をしない」と言い出したのかについてですが・・・
宮中祭祀(天皇陛下が国家の繁栄等を祈って行われる祭祀)で皇族の女性が拍手を行わないからというのが理由だとか。
そもそも宮中祭祀では女性に限らず男性も拍手をほとんど行わないそうです。
このあたりは西野神社さんの社務日誌の二拝二拍手一拝という作法という記事にて詳しく解説されていますので詳しく知りたい人は飛んでみてください。
また、戦前は天皇陛下は大元帥という軍人の最高位を兼ねていらっしゃいましたが、軍服で参拝した際に手袋を外さずに拍手を省略して礼のみで参拝され、皇后陛下もこれに倣って拍手をせずに参拝されたこともあったようです。
ですがこのケースに倣ったにせよ、軍服で参拝された際の一時的なものですし、男性と女性で拍手をするしないが決まっていたわけでもありません。
女性は拍手をしないという根拠は全くもってわかりません。
音をたてないことについて
また、音をたてないことについても何が根拠になっているのやら・・・
音をたてない拍手は「忍び手(しのびて)」といって葬儀の際の作法であって神社で参拝するときに行うことはありません。
そもその二礼二拍手一礼っていつできたの?
「二礼二拍手一礼は全国の多くの神社で行われているからとっても由緒の深い作法なんだ」と思っている人もいるかもしれませんが、実は神社の歴史からみると最近登場した参拝方法です。
はっきりとしたことは言えませんが、参拝方法が統一されてきたのは明治に入ってからでは無いかと思います。
二礼二拍手一礼の詳しい経緯についてもさきほどの二拝二拍手一拝という作法 という記事で詳しく解説されていますが、明治15年に神社祭式が皇典講究所という養成機関で指導されたのが初めてであったとか。
その後、紆余曲折を経て昭和23年に「神社祭式行事作法」というものが改正されて「再拝→祝詞奏上→再拝→二拍手→一拝」という作法が定められたのですが、現在の参拝作法が「二礼二拍手一礼」なのもこれに基づいてのようです。
※礼と拝の違いについて
礼と拝という言葉が出てきますが、「拝」というのは神主の作法で90度の深いおじぎのことを言います。神主の作法には小揖(しょうゆう・15度ぐらいのおじぎ)、深揖(しんゆう・45度ぐらいのおじぎ)もあるのですが、これらをひっくるめたものが「礼」です。
一般の人はあんまり気にすることは無いと思います。
二礼二拍手一礼って歴史も浅いし由緒無いの?
じゃあ二礼二拍手一礼って歴史も浅いしそんなに意味が無いんじゃ・・・ということになるかもしれませんが、成立にあたってはその当時の神社界の識者によって決められていたでしょうし、何らかの由緒はあるものと思われます。
昭和23年の神社祭式行事作法の改正では全国の神職の意向を受けてのことだったということで、それまで神社で行ってきた作法に基づいての決定だったでしょうし、全く理由無しに決まったものではありません。
個人的な考えとしては、「きちんと成立した時点から考えると歴史は浅いもののある程度由緒に基づくものである」という感じです。
今回の要点
というわけでツラツラと書いてみましたが
- 一般の人の参拝作法はそれぞれで強制されるべきでない
- 著名人が根拠の無い変わった参拝作法とか広め出したら強制的に止めることもできないけど神社としては困る
- 二礼二拍手一礼は成立してからの歴史は浅いけどある程度根拠がある
ということかなと思います。
今回の記事タイトルの質問に答えるならば、「絶対に二礼二拍手一礼でないといけない」ということは無いでしょう。
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